【ゼインアーツ】ゼクーの意味から読み取る小杉敬氏の展望

キャンプ雑談

Kですみなさんこんばんは。

2021年のゼインアーツ新作テント、オキトマ2の名前の由来について調べていたら脱線しすぎてしまいまして、そのまま書き続けたら内容がガラッと変わってしまいました。

そんなわけで今回はタイトル通りゼクーの名前の由来と、ゼインアーツ代表の小杉氏についての記事になります。

いつか書きたいと思っていたので、ちょうどいい機会になりました。

一過性のブームとしてではなく、本当にキャンプが好きな人にこそ読んでいただきたい内容です。

お時間がある際に、ぜひご一読ください。

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ゼインアーツとサバティカル〜小杉敬という名の創造主

2019年春に登場するやいなや瞬く間に日本のアウトドアシーンを席巻し、今や新進気鋭どころか国内屈指のアウトドアブランドに成長したゼインアーツ

その代表者は、30年近い業界歴を持つ小杉敬氏。

過去にはスノーピークの商品開発に携わり、同社にて要職に就きながらも、独立して立ち上げたこのブランドのローンチ商品は即完売。

そして自社商品のみならず、A&Fのブランド「サバティカル」の商品デザインを手がけるなど、アウトドア業界全体の発展に寄与し続けています。

そして2021年6月には、新たに2種類のテントと、ペグやハンマーなどいくつかのキャンプ用品をリリース予定で、こちらもまた激しい争奪戦が予想されます。

大人気シェルター「ゼクー」名前の意味

ゼインアーツのコンセプトは「自然との調和の美しさ」だそうです。

代表作のひとつである「ゼクー」は、般若心教という世界一短い仏教の経典に出てくる一説、「色即是空」からとられています。

「色即是空」という言葉を耳にしたことはあっても、その意味を知り、理解できている人は少ないと思います。

もちろん僕もそうでした。

色即是空=「この世の万物形あるものは全て、空である」という意味になるのですが、「空」の概念を理解するのはちょっと難しい。

「空」の概念を簡単に理解する

「マイブーム」、「ゆるキャラ」等に代表される流行語の生みの親、みうらじゅん氏が提唱した新しい写経、「アウトドア般若心教」をご存知でしょうか?

氏が家から外に出て(出家して)、日本全国津々浦々の街の看板の中から般若心教の経典にある278文字の漢字をひとつひとつ探してはそれを1文字ずつ写真に撮り(写経を行い)、集めた文字を並べて経文を完成させるという戯れ(修行)です。

例えば、”摩訶般若波羅蜜多心経まかはんにゃはらみったしんぎょう“という一節の構成要素である「若」という文字を、花田虎上氏がかつてプロデュースしていたちゃんこ屋さん「Chanko Dining 若」の看板で撮ったりしています。

ばかばかしいと思いますよね?しかしこれはただのシャレの効いた遊びではありません。

バラバラの状態ではただの看板の中の1文字でしかないものを、経文どおりの順番に並べることによって、1つの意味のある「般若心教」という存在が浮かび上がってくる。

これこそまさに、色即是空なのです。

一見意味もなく、無価値にすら見えるものが集合して塊となって一つの意味を成す。たった1文字が欠けても経文として成立しない。

言い換えれば、ひとつひとつが般若心教を構成する大事な構成要素の一片であるはずなのに、分解するとただの看板の中の1文字になってしまう。

この世のあらゆるものは、実はそのように見えているだけであって、不変の物質そのものがそこに存在しているわけではない。つまり「この世の万物は空」であり、それこそが存在の真理であるというわけです。

まだわかりにくいですね。

もっと噛み砕いて言えば、「この世のあらゆるものに実体はなく変わり続ける。だから執着を捨てて、自分が空っぽであることを受け入れなさい」という教えになります。

僕らは何かの一部であって、常に変わり続けていく存在なのです。

小杉氏のいう色即是空とは?

前述したとおり色即是空とは、自性のないものが集まってひとつの状態を成すこと。

それでは小杉氏は、たくさんのギアを買い集めて並べ、キャンプという形を成そうぜ!と提唱しているのでしょうか?

おそらく、それとは真逆です。

以前小杉氏が、アウトドア情報メディア「hinata」のインタビューの中でこうおっしゃっていました。

今はインスタグラムがあり、グランピングだけでなく、キャンプでもデコレーションの世界が強まっています。自慢のアイテムを配置して、それを見ながら酒を飲むのを楽しむ人もいますよね。設営した充実感に喜びを感じるのもそれはキャンプの一つのスタイルとして魅力的ですが、自然を楽しむアウトドアの観点でいうと、少し本質からずれているような気がしています。

hinata:最注目ブランド・ゼインアーツの代表が語るキャンプトレンド コロナ禍に支持されるテントの秘密

このインタビュー記事には、というか小杉氏のお話にはいつも感銘を受けます。

そして、

アウトドアを知り尽くした開発者が、突き詰めて極限まで無駄を省いたミニマルかつ魅力あふれる商品を提供することで、ユーザーは過度な装飾を必要とせず、自然の中に溶け込むことに意識をフォーカスできる。

これが「自然との調和の美しさ」をコンセプトに掲げるゼインアーツの狙いなのだと僕は考えます。

日頃は異なる場所で、それぞれに違う生活をしている他人同士が、キャンプという状態に身を置くことによって作られる、同じ日に同じ場所で、同じ空気と同じ時間を共有する刹那的な繋がり。

同じ場所でも時間とともにゆっくりと変わる空の色や、移りゆく季節の中で少しずつ変化していく風景。

集う人々の笑顔。

焚き火の炎と、空に上がっていく煙。

肉の焼ける匂い。

遠くで子供たちの笑い声が聞こえる。

そんな豊かで質の高い時間の提供の一助となるキャンプギアを作り続けていきたい。

これこそが、「ゼクー」に込められた意味であり、ゼインアーツのささやかな、しかし力強い決意なのではないでしょうか?

もっとも、「物に固執するな」という意味をその名に内包するテントに人気が集中して争奪戦を繰り広げる様は、皮肉というか滑稽というか。

僕もまた、そんな煩悩を捨てきれない人間の一人であったということは言うまでもありませんが。

これからのゼインアーツ

もちろん商売ですから綺麗事だけでは済まされません。

そこはプロらしく、トレンドを的確に把握して、そこから掘り起こした潜在ニーズを人一倍強いアウトドア愛と豊富な経験によって具現化して、ヒット商品を世に送り出しています。

また、同インタビュー記事で小杉氏は「アウトドアが廃れ、愛好家が減ると地方への人の流れが止まりますます廃れていってしまう。それを食い止めて活性化させるための商品開発も今後していきたい」といった趣旨の発言もされています。

ただの綺麗事ではなく、地方にお金が落ちる導線の確保までも視野に入れてくれているようです。

業界を牽引する覚悟を持ったアウトドアの達人は、やはり視点が違いますよね。

今後の展開がますます楽しみです。


さて、最後まで読んでいただいた方は「空」の概念についても、少なからず興味が湧いてきていることと思います。

先にご紹介したみうらじゅん氏の著書「さよなら私」の中で、堅苦しくなく「空」についての理解を深められますので、よろしければご参考まで。

ではまた次回お会いしましょう。

おやすみなさい。

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