ものすごく売れていないそうだ。
発売から現在までの売上がシリーズ全体のわずか5%であるとの記事を目の当たりにして「これほどまでか…」と肩を落とした。
僕の愛機である「iPhone12 mini」は、どうやら万人受けしないようだ。
12シリーズ発売前に予想されていたこと
iPhone12シリーズ発売前はネット上で(※僕の主観も多めに混じってはいるが)こんなことが言われていた。
iPhone12とiPhone12 Proの差は、ほぼカメラ性能のみ。ズームができるか否か?という違いだけで2万円以上の価格差は妥当であるかどうか疑わしいので、この2機種についてはiPhone12の方に軍配があがる。
次に、ディスプレイサイズ6.7インチで重量が226gもある12Pro Maxは、スマホの大型化が止まらない現状にあってもいくらなんでもデカすぎるし、その高すぎる価格も性能も多くのユーザーにとってはオーバースペックではないか?
その点12 miniの方は5.4インチで133g。小型軽量化に伴うバッテリー容量の小ささ=電池持ちの悪さという弱点はあるものの、片手操作も容易でジャケットやパンツのポケットにも収まりが良く、往年の名機であるiPhone5sの再来であるとの呼び声も高い。
そして、なんといってもその小さな筐体にノーマルの12と何ら変わらない性能がミニチュア化して詰め込まれているという、まさに現代技術の結晶、ロマンの塊である。
これは大きいことが正義であるような現在のスマホ市場に一石を投じ、新たな需要を喚起する起爆剤となるに違いない。
ところがフタを開けてみれば売れ行きが良いのはProとPro Maxの方で、2021年の第1〜第2四半期においてProは200万台、Pro Maxにいたっては1100万台もの増産の見込み。
対して前評判のわりに売上が非常に低調であるiPhone12と12 miniについては、それぞれ1000万台程度の下方修正になるらしいのだ。この売上低迷を受け、タイトルにあるとおりiPhone12 miniの生産停止がアナリストにより予測されている。
12シリーズ各機種の明暗を分けた理由
iPhone12
iPhone11と iPhone12の差は、チップ、ディスプレイ、5G対応、MagSafe対応あたりになる。12シリーズの発売に伴いiPhone11が値下げされたことによって、11と12の価格差は2万円以上開いた。
主な用途が電話にSNS、コンテンツ消費だとチップは最先端のものでなくてもいいし、11のディスプレイも十分きれい。ミリ波非対応で本格的な5Gの恩恵を受けることはまだできない上に、MagSafeは便利そうだけどなくても別に困らない。
このレンジを選ぶ層に向け、2万円の価格差を埋めるには訴求力が足りなかったようだ。 現に iPhone11は800万台の増産が見込まれている。iPhone12は iPhone11に負けてしまったのだ。
iPhone12ProとPro Max
iPhoneを求めるユーザーは、常にハイエンド端末の上位モデルを使用したいという高級志向と、リーズナブルな価格で最新技術の一端に触れたいというコスパ志向に二極化している。
iPhone12はその真ん中を取って両方からいいとこどりしたつもりが、中途半端な立ち位置になってしまい、ハイエンドな最新機種を求めるユーザーはProに流れてしまった。
Proを冠するモデルの、医療用ステンレススチールというおおよそ電話には必要なさそうな素材を用いて造られたギラギラと輝く筐体は正に高級志向そのものである。
そしてスマホの性能向上はもはや一般ユーザー向けとしては頭打ち。しかしそこを突き抜けて映像撮影・編集加工を生業とするプロの食指を動かすところまできているという現実が、Pro Maxの堅調な売上という形になって現れているのかもしれない。
そして僕の iPhone12 mini
かつて僕の一人暮らしのアパートに置いてあったTVはSHARPのテレビデオ14型だった。それがホームシアターブームや地デジ化による液晶テレビの普及を経て、今や六畳一間でも32型であるとか、一般家庭のリビングで60型などは当たり前になってしまった。
20年前の僕には将来60型のテレビを部屋に置くことになるなんて事は想像もつかなかったが、今テレビを見ていても特に大きいとは思わない。
スマホも iPhone6シリーズを初めて見たときやNexus6を所有したときは「デカい」と思ったが、テレビ同様の慣れで今は6インチくらい普通になってしまったし、逆にそれ以下では「小さい」と思えるようになってしまった。
iPhone12 miniは、僕みたいな懐古趣味の人間があの頃を思い出して興味をそそられたものの、実機を見てやめたというパターンも相当多いだろう。正直僕も予約して発売日到着を楽しみに待っていたものの、電源を入れた直後にちょっと小さいか…と感じてしまった。
でもそんな思いも束の間、僕はHuaweiのnova lite3からの買い替えだったこともあり、 iPhoneならではのサクサクとした動作で今まで少なからず感じていたストレスを全て消し去ってもらい、そしてそのスタイリッシュな外観に所有欲を満たしてもらっている。
レザーウォレットも同時に購入してそれを機に財布を持つことをやめたので、手ぶらが好きな僕はこれ一つ持つだけで外出できるようになり、小さいことが良い方に働いている。
しかし僕のようなケースは稀で、大画面に慣れた多くのユーザーにとって小ささは、やはりストレスでしかない。僕は仕事中、車の中でラジオ感覚でYouTubeを流しっぱなしにしているからあまり気にならないものの、 iPhone12 miniで映画を観ようとは思わない。
同じ小型でもiPhone SEとはそもそものコンセプトが違うし、やはり今どき小さな端末はいくら高性能でも大衆には刺さらないのだ。
バシュラールの法則
小さなものの世界で想像力を発揮して夢を見ることは人々を真の安らぎに導き、やがて、ふくよかな気持ちを与える。
哲学者ガストン・バシュラール
フランスの科学哲学者、ガストン・バシュラールはかく語りき。人は大きいものよりも本能的に小さなものを好むそうだ。
なるほど僕も子供の頃はミニカーやプラモデルで遊んだし、鉄道のジオラマやデアゴスティーニで作るお城や車など、ミニチュアの世界は大人をも虜にする。
細部まで精巧に作られた小さな造形物に想像力をかき立てられて心がおどる。小さな筐体に最新の技術がふんだんに詰まったiPhone12 miniの発表を受けて人々がワクワクしたのは、きちんとした科学的根拠があるのだ。
しかしiPhoneは観賞用ではなく、人々が日常的に使う道具だ。見る分には興味をそそるが、実際にそれを使いたいとは思わない。他のシリーズと基本機能は同じなのだから、小さいなりのメリット=価格の低廉化という部分を追求しないと販売につながらない。
iPhone SEと明暗を分けたのは価格に他ならない。バシュラールの法則を使うべきだったのは、本体サイズではなく価格だったというわけだ。
iPhone13 miniの発売はあるのか?
先ほどから散々 iPhone SEを引き合いに出しているが、 SEは旧モデルの筐体をベースにすることでコストを抑えながらも最新のチップを積んでいて価格と性能のバランスが良く、数多くいる iPhoneを使いたいが価格がネックになっているユーザーに対して非常に人気が高い。
決して小さいから売れているのではなく、上記のような明確な理由がある。
iPhone SEが iPhone5sを、 iPhone SE(第2世代)が iPhone8をそれぞれベースにしていることから、次期 iPhone SE(第3世代)は iPhone XRをベースにして開発されるのではないか?ということも一部で予想されている。
iPhone XRは6.1インチで iPhone12と同サイズだ。筐体は数ミリ大きいが、 SE化が実現されればこれまでとは違い初めて現行最新シリーズと同等の大きさの iPhone SE誕生となる。
だとすると12miniは、来るべく iPhone SE大型化に向けて小さな端末ファンへの受け皿として用意されたということなのだろうか?仮にこの推理が正しくても、現在の販売状況で小型端末は需要がないことが分かってしまった。
このような状況ではminiシリーズの存続は絶望的と言わざるを得ない。
しかしiPhone SE第1世代が2016年、第2世代が2020年登場という発売サイクルを考えると、 iPhone SE第3世代の登場はまだまだ先と思われる。
そうなると iPhone12 miniはこのまま生産台数を絞りながら一旦姿を消し、いずれiPhone SE第3世代となって再登場することも予想される。
先代の出自を考慮すると、販売終了した小型端末が数年先にその時代の最新チップを搭載した「廉価版 iPhone」として再び登場することは現実的であるし、そういった形であればヒットすることは間違いない。
いずれにせよiPhone12 miniがお気に入りで、相棒としての生活が板についてきたマイノリティである僕はどのような形になっても販売が継続されることを望んでいるし、現在非常に厳しい状況ではあるが、今後の巻き返しに期待している。
「マイノリティ」を積極的に雇用し「多様化」を掲げて経営しているAppleなら、なんとかしてくれるだろうか?
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