楽天モバイルが2021年1月29日、新料金体系を発表しました。
1つのプラン内で利用者ごとに月次のデータ使用量別に料金が決まる段階性を採っており、
- 1GB/月以下のユーザーへの請求額は、なんと0円
- 3GB/月までは980円
- 20GB/月までは1,980円
- 20GB超過後はどれだけ使っても2,980円
と非常に分かりやすく、かつ個々に使用状況の異なる全てのスマホユーザーに平等なプランへと生まれ変わりました。
新プランの策定ではなく、あくまで現行プランのバージョンアップで名称は「Rakuten UN-LIMIT VI」。2021年4月サービスイン予定。
もちろんこのままエリアが順調に拡大して安定してつながることが大前提ですが、アプリを使えば国内通話かけ放題+高速データ通信無制限で2,980円は依然として最強のプランです。
Rakuten UN-LIMIT VIの注意点
素晴らしいプラン内容ではあるけれど、楽天回線エリアは2021年1月現在で人口カバー率が73.5%と低く、自社回線エリアに加えて不足部分はパートナー回線と呼ばれるauローミングエリアでカバーすることでつながりやすさを確保しており、場所によって高速データ容量が違ってきます。
データ通信に関して
楽天回線エリア内の場合
高速データ通信が何ギガでも使い放題で2,980円。これと同等のプランは他社にないので、楽天一択。
楽天回線エリア外の場合
パートナー回線エリアでは5GBまで高速通信で、超過すると1Mbpsに速度制限がかかるので、居住地がエリア外である人は要注意。
つまり楽天回線エリア外の人が高速データ通信を使えるのは5GBまでということになる。
20GB/月までの使用であれば請求額は1,980円でahamoと比べ1,000円、povoと比べ500円安いが、高速通信が使えるのは5GBまでで、超過すると速度が最大1Mbpsになる。
では実際自分のデータ使用量では、どのキャリアを選べばベストかは次のとおり。
データ使用量が1GBまでの人
Rakuten Linkを使った国内通話かけ放題+高速データ通信も無料で使えるので、楽天を選ぶのがベスト。
3GBまでの人
Rakuten Linkを使った国内通話かけ放題+パートナー回線5GBまで高速データ通信980円の範囲に収まるので、こんな人も楽天で良い。
3GB〜20GBまでの人
20GB/月を超える人
また、エリア問わずmy楽天モバイルアプリ内で「高速モードをオフ」の設定にしていても、速度最大1Mbpsに制限されるだけでデータは消費されるため請求が0円になるわけではない。使用した分、料金表に応じた請求額となる。
僕はこれ最初勘違いしちゃって、「えーーー!?高速モードオフで俺一生スマホ通信量タダじゃん!!!!」と一時的に大興奮してしまいました。
僕は今UN-LIMIT Vを契約中。仕事で車での移動時間が長く、YouTubeや Spotifyなどをラジオ代わりにしてずっと低速モードで使っているが全く支障がありません。
それでだいたい10GB/月くらいなので、僕の場合は請求額は1,980円になりそうです。
※海外での高速データ通信は2GBまでで、超過後は128kbpsに速度制限。
通話料に関して
Rakuten Linkアプリを使用した通話は無料。このアプリでの通話でデータは消費しない。どこで誰にかけてもアプリ経由なら0円だ。(※0570から始まる他社接続サービスなど一部例外あり)
※アプリ未使用時は30秒20円
契約に関して
今現在Rakuten UN-LIMIT Vの契約者は、特に何の手続きも必要なく2021年4月1日からVIに自動的にバージョンアップされる。1年の無料期間も引き継がれる。
新規契約者300万人まで1年間無料は継続。今現在220万人なので、残り80万人。
オンラインでも店頭でも受け付ける。
楽天包囲網
楽天モバイルがサービスインしてから今までの経緯は決して順風満帆ではありませんでした。
- 2019年10月、第4のキャリアとしてスタートすべく、その前段として東京、大阪、名古屋、神奈川エリアの5,000名を対象に「無料サポータープログラム」を開始。基地局設置の遅れから、つながらない、サポートが悪いと苦情が絶えず、何度も総務省の行政指導が入る。
- 2020年4月8日。楽天モバイルが第4のキャリアとして本格的なサービスを提供開始。先着300万名限定で契約時より1年無料(2年以降2,980円/月)でスタート。
- 2020年6月 契約100万回線到達。
- 2020年9月、5Gに対応した現行のバージョンVにアップグレード。
- 2020年11月、ZERO宣言。全ての事務手数料を0円に。
- 2020年12月、契約200万回線に到達し、現在に至る。
サービス開始からまもなく1年経過となり、2021年3月をもって無料期間が順次終了していくという状況が迫る中、予想されたのが楽天解約まつり。
楽天回線の人口カバー率70%を超えた地域は協議の上、順次ローミングを終了していく条件での契約であるとのKDDIの発表と、その関係か西東京や大阪、奈良で突然つながらなくなるユーザーが現れたことも記憶に新しい。
2021年夏までには人口カバー率96%にまで拡大するとアナウンスされつつも順調に計画が推移するという保証はどこにもないし、無料ならともかく使えるかどうかもわからない回線の契約に月2,980円も払えないですからね。
そんな時期に合わせて楽天を離脱したユーザーを取り込むべく、戦略的に発表された3大キャリアの20GBまで高速通信可能な2,980円/月プラン。
これが楽天包囲網。誰もが「楽天終わったな」と思ったわけです。
プレスカンファレンスでのプレゼン
登壇し、穏やかな口調で語り始める三木谷社長。
以下、要点をまとめて抜粋。
社会生活において必要不可欠な社会インフラであるスマートフォン。
5Gの時代到来でユーザー1人当たりのデータ消費量が膨らんでいく一方で、経済的な理由でスマホが持てない方や、低速なプラン契約を余儀なくされている方もいる。
モバイルネットワークは民主的でなければならない。
それが楽天モバイルの哲学である。
はい、ここすごく重要。
重要な社会インフラに成長したスマホを、誰もが分かりやすい料金体系と適正な価格で提供すると宣言した上で、満を持して先の衝撃的な新料金発表でした。
さまざまな形態でスマホを使用する全てのユーザーにとっての最大公約数となる回答を、「わかりやすさ」というコンセプトを崩すことなく、1つのプラン内で実現させました。
具体的な事例を次のように解説されておりました。
- 毎月大容量使い20GBでは足りない人→2,980円で高速データ通信無制限
- 1GB以下でガラケーで事足りる人→0円で通話は無料
- 月によって利用量が変わる人→ 3GBまで980円、20GB使っても1,980円
電話は無料だしデータも使わなければ請求額は0円なので、解約しようとしてる人への抑止力にもなる。あっさりと「楽天オワコン説」を吹き飛ばしてしまった。
更に、他社が「オンライン専用申し込み」にすることでコストを削減し、格安プランを実現したことに対して、逆デジタルデバイドではないかと言い放った。
「ネットで申し込みができる人は安く、店舗に足を運ぶ人は手間が掛かるから高い」というのはおかしいのではないか?楽天は店舗でも受付可能とし、どういった人にでも平等であることを強調していました。
これは痛快でしたね。プレゼン中で僕が最も興奮した瞬間でした。
大ヒットの予感がする商品ですから、今後の契約数の伸び具合よってはショップの店員にかなりの負担を強いることになり大変では?とも思いますが、プランは1つでわかりやすいですし僕でも理解して説明できるくらいですから、取り越し苦労でしょうか。
そして何よりこの業界において、ショップ店員さんが自信と誇りをもって紹介できる商品を開発した、ということについても評価されるべきポイントではないかと個人的に思っています。
引き合いに出して申し訳ありませんが、ahamo発表時にNTT docomo担当者は、そのコンセプトについて次のように述べていました。
社内の若手チームで作った20代をターゲットにした新料金プラン。
docomoは家族向けのプランが中心となっており、その割引条件も複雑。
20代のユーザーにとって大変分かりづらいものになっており、個人として生活するユーザーにメリットがない。
特別な条件など、余計なものは排除し、シンプルで分かりやすく1人でもお得なプランを20代向けに作った。
自社で今まで訴求して来なかった特定の世代を対象として開発した限定的な商品と、モバイルネットワークの民主化を自社のコンセプトに掲げ、ユーザー目線で開発された商品。どちらが強いかは言わずもがな。
「docomoが悪い」といっているわけではありませんので、そのあたりは誤解がないように。
ただ、新参者が業界をひっくり返してやる!という旗を掲げて既存大手に迫り、不況に喘ぐ国民の悲願であるスマホ通信料金の低廉化を実際に引き起こしたという事実は賞賛に値すると個人的に思うわけです。
しかし本当にドラマチックな逆転劇でしたね〜。
楽天グループの社内公用語は英語ということで、日本語でのプレゼンは久々なのか三木谷社長カミカミでしたが、前述の経緯があってからのプレゼン内容にちょっと心が震えちゃいました。
今後のロードマップ
2021年夏までに人口カバー率を96%にする
基地局をどこに作れば良いかピンポイントでわかるデータを持っている。
仮想化技術で基地局の設置設定もローコストでスピーディーに行える。
社員を総動員し、楽天市場で培った営業力を駆使して基地局設置先との交渉を自前で進めている。
これは至上命題ですね。いくら素晴らしいプランを発表してもつながらなければ意味がありませんので。今までの経緯を見ていると遅れが生じそうな気もしますが、頑張って実現させていただきたいものです。
プラチナバンドの再割り当てを継続して求めていく
格安料金プランの発表やZERO宣言などで、総務省の示すガイドラインを着実に実行しスマホユーザーの自由度と利便性向上に貢献している。
同業他社と正当な競争ができるようにプラチナバンドの割り当てを要求し、100点になる予定の通信環境を120点にしたい。
これは総務省に速やかに検討していただきたいですね。楽天のチャレンジと実績の積み上げはプラチナバンドを割り当てるのに十分ではないかと思います。
2023年スペースモバイル計画
地理的カバー率100%を目指す。
決して夢物語ではなく、既に総務省や他の3大キャリアも交えたタスクチームによる検討が行われている。
今後技術面や法律面のハードルをクリアし実現に漕ぎ着けたい。
これ実現したらすごいですよね。衛星とスマホが直接リンクするなんて。
他社は絶対に真似できないとおっしゃっておりました。そりゃそうでしょう。
実際に動き出しているようなので、僻地で遭難した人の救助や、災害によるインフラのダウンに備え、ぜひ実現していただきたいものです。
モバイル単一事業ではない
もはや料金が他社よりいくら高いとか安いとかそういう次元じゃなく、通信業界の未来を見据えてもっと崇高な目的や理念で動いているという印象ですよね。
プレゼンが上手いだけかもしれませんが、そのコンセプトは多くのユーザーを納得させるものであったと思います。
今回の事実上の値下げに対して、収益の低下や、それに伴い損益分岐点が大きく上がってしまうことについて質問を受け、決して単一事業ではないということを強調されていましたね。
楽天モバイル事業に加え、楽天グループとしてのシナジー、そしてRCPプラットフォームのグローバル展開という野望。それら全てをひっくるめての最終的な評価になるので、モバイル単体でどうこうという話ではないと。
ここが他社との視点の差であって、通信事業だけで、ただ隣を見て高いか安いかということをやっているわけではないということでした。
もちろん全てが実現されればの話ですが、実際長年全く革新のなかった業界に対して全体を巻き込んだ価格競争を促進させたわけですから、これはもうかなり大きな実績になりますし、間違いなく歴史に名を刻みましたね。
しかも本格参入してたったの1年そこらでこれをやってのけたという事実は、本当にあっぱれです。
今後のさらなる躍進を、大いに期待していいと思います。
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最後まで読んでいただきありがとうございました。
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