藤原竜也の絶叫演技と、おいでやす小田の絶叫ツッコミがシンクロして見えてしまうScarabですみなさんこんばんは。
キャンプブームと言われる昨今ですが、ブームであることを感じさせられる要素が2つあります。一つは例年と比べキャンプ場が明らかに混んでいる事。そしてもう一つは定番ギアの品切れや価格の高騰が目立つ事です。
例えばSOTOのST-310はメーカー欠品中で、Amazon最安値は今日現在で8,300円と、通常価格より2,000円ほど高くなっていました。
ちょっとくらい高くてもほしい!という方は道具沼にハマる素質が十分にある方だと思います。
このブログでも何度か書いているとおり、キャンプにハマるとこれ一つでいいや、とはいかなくなり、同系統のギアでも興味を持てばついつい買ってしまう様になります。
どうせ全部買うなら、「先に買うか、後で買うか」だけの問題です。
変に価格が高騰している商品があるなら、とりあえず同系統の別商品を買って本命の値段が落ち着くのを待ちませんか?
例えばSOTOのCB缶一体型バーナーが入手困難なら、OD缶一体型の方を先に買ってみるとか。
というわけで、今回は僕のバーナー選びを例に取り、CB缶とOD缶の違いから各バーナーの特徴、選定ポイントまでを徹底解説していきます。
キャンプに最適なOD缶一体型バーナーを、一緒に選んでみましょう!
ちょっと前置きが長いので、ガス種やガス缶の違いについての情報が不要な方は、目次からお好きな所までジャンプしてください。
※尚、本記事中に登場する価格はメーカーの希望小売価格です。また、希望小売価格の設定が無いものに関しては、執筆時点でのAmazon最安値を参考にしています。
CB缶とOD缶の違い
ガス種の違い
缶自体のお話の前に、まずはガス種の違いから。
ガス缶に充填されているガスにはブタン、イソブタン、プロパンの3種類があります。
温暖期用のノーマルガスにはブタンとイソブタンが、そしてオールシーズン用のパワーガスにはイソブタンとプロパンがそれぞれ充填されています。
下表は、ガス種による燃焼性能の違いをまとめたものです。それぞれの燃焼エネルギーには大差がありませんが、蒸気圧と沸点が大きく違います。
ガス種 | 充填缶 | 蒸気圧(hPa) | 沸点(℃) | 燃焼エネルギー(kJ/g) |
---|---|---|---|---|
ブタン | ノーマルガス | 2,213 | -0.5 | 42.8 |
イソブタン | ノーマルガス/パワーガス | 3,113 | -11.7 | 42.8 |
プロパン | パワーガス | 8,513 | -42.09 | 44.0 |
蒸気圧とは缶からガスが噴き出る圧力の事で、同じ時間で比べれば当然圧が高いほどたくさんのガスが噴出する結果となり、火力が強くなります。もちろんその分減りも早いです。
また、沸点とは液体が気体になる温度の事です。水は100℃で沸騰する=沸点は100℃というのを小学校の理科の授業で習いましたが、ガスの沸点は?というと先ほどの表のとおりとなります。
ブタンの沸点は−0.5℃ですので、氷点下では気化できずに(※厳密に言えば気化の速度が著しく遅くなり)使用不可となります。
ごく微量の気化ガスが発生したとしても、沸点以下では気化ガスの蒸気圧が大気圧より低くなる為、ガス缶の外には出られませんので、燃焼不可となるわけです。
つまりブタンが主成分となっているノーマルガスよりも、より蒸気圧が高くて沸点が低いイソブタンとプロパンが主に充填されているパワーガスの方が寒冷地に適しているという事になります。
ただし、ガスが気化する際に周囲の熱を奪う気化熱の影響もあるので、実用温度は沸点+5〜10℃程度を見越しておく必要があります。
ノーマルガスなら外気温5〜10℃、パワーガスなら–10〜–5℃程度までが最低限実用的に使用可能な温度範囲になると思います。
ガス缶の違い
家庭用のカセットコンロやSOTOのST-310などに使用される細長い缶がCB缶、アウトドア用の背が低くて太ったボディの方がOD缶です。
CBはカセットボンベ(Cassette Bombe)、OD缶はアウトドア(OutDoor)の略です。
ちなみに“ボンベ”はドイツ語で、英語でカセットボンベを表すとガスシリンダー(Gas cylinder)になる様です。
CB缶
家庭用のカセットコンロに使われるCB缶は基本的に屋内での使用を想定して作られていますので、ブタンのみが充填されています。
例外として、イソブタンとプロパンが充填されたSOTOのパワーガスの様なアウトドア特化型の寒冷地仕様のCB缶がありますが、充填率は公表されていません。
OD缶
その名のとおりアウトドアでの使用に特化したガス缶です。
前述のとおりブタンとイソブタンが充填された温暖期用と、イソブタンとプロパンが主成分のオールシーズン用があり、屋外での使用はもちろん、高所・寒冷地での使用にも適しています。
また、OD缶には次の3種のサイズ展開があります。
ガス機器にねじ込みする部分の構造は各メーカー共通ですが、ボディサイズや充填容量に若干の違いがあります。
充填量が110缶でも105gだったり、500缶でも470gだったりと軽微な差ではありますが、CB缶の様に規格は統一されていない様です。
基本的にどのメーカーのOD缶とバーナーの組み合わせでも、物理的に取付・使用可能です。
しかし、バーナーと同社製のガス缶1セットで検査をパスして国内での販売を許可されている都合上、各メーカーともバーナーには自社製のガスを使用する様にアナウンスしています。
ところで、寒冷地仕様にするなら沸点が最も低いプロパン100%にすれば最強なのに、なんでイソブタンも混ぜちゃうの?って思いませんか?
実は、先ほどの表にあったとおりプロパンは蒸気圧が高く、内圧が上がりやすい為に相当頑丈な容器に入れる必要がある、というのがその理由です。
実際ガス屋さんがよく転がしている灰色のプロパンガス容器はかなりゴツいですよね。
持ち運びの利便性も考慮しなければいけないので、アウトドア用の小さな缶でこの強度を再現するのは現実的に難しい事が、なんとなくお分かりいただけると思います。
それでもOD缶はなるべく多くの高圧ガスをその小さなボディに収めるため、CB缶より内圧に強い構造になっています。
低く、横に広いボディである事以前に、缶本体を構成するパーツをCB缶より一つ少なくする事で剛性を高めています。
この構造上、OD缶と同量のプロパンガスをCB缶に充填する事は難しい為、アウトドアでの使用にはOD缶が推奨されますし、先ほどのSOTOのCB缶パワーガスの火力はOD缶に劣ると思われます。
以上、ガス種及びCB缶、OD缶についての概要でした。
かなり前置きが長くなりましたのでもう一度書きますが、今回はこのOD缶に直接本体を取り付けるタイプのバーナー=「OD缶一体型バーナー」選定のお話です。
OD缶一体型バーナーはこんな人向き
ガス缶の違いがわかったところで、どんな人にOD缶一体型バーナーが向いているのかを解説していきます。
ガスバーナーにはCB缶用とOD缶用の2種類がありますが、コンビニやホームセンターで入手しやすいCB缶を使う物の方がとっつき易いのは事実です。
特にST-310はアシストセットや溶岩石プレート、遮熱板兼ミニテーブルになるミニマルワークトップなど、オプションも豊富で可能性が広がり、楽しみも増えますから人気が出るわけです。
何より家庭用のカセットコンロと同じような感覚で使えますからね。
対してOD缶一体型はキャンプ用というより、登山用の山道具という印象です。使用するガス種やガス缶が本格的なアウトドア仕様になっていますからね。
そもそも山道具はそれを担いで移動し、標高が高い=気温が低いところで使用するという性質上、軽量コンパクトかつ耐低温性に優れている物が多く、キャンプで使用する火器としてはオーバースペックである場合が多いと思います。
OD缶一体型を使用するにあたっての注意点は以下のとおりです。
登山ではキャンプと違って、短時間で済ませられるレトルト食品や簡易的な調理が主体になるので、上記注意点がそれほど気にならず、軽量である事も相まって、やはり山行に向いた火器であると言えます。
大きいクッカーで作る長時間の煮込み料理などには向かないという点で、キャンプにおいてはソロ用か、大人数であれば調理済みの物の再加熱用、もしくは湯沸かし用のサブバーナーという位置付けになります。
OD缶バーナーに安定性を求めるならば一体型ではなく、重心が低く、五徳とガス缶が離れた分離型を選択しましょう。
キャンプにおいては、バイクや徒歩での移動がメインの方や、軽量装備にこだわっている方など、バックパックに全てを収める必要があって、少しでも小さくて軽いギアを必要とされている方にとって、OD缶一体型バーナーは良い選択肢となります。
ちなみに僕の購入動機は以下のとおりでした。
縦長のCB缶は太ったOD缶と比べ、荷物の隙間に突っ込みやすいので収納しやすく感じますが、250サイズ以下のOD缶は900mlクラスのクッカーにスッポリ収まりますので、場合によってはこちらの方が省スペースで収納に有利であると言えます。
それらしい理由を付けてはみたものの、持ってないのでとりあえず1個ほしかった、というのが率直なところです。
用途別OD缶一体型バーナー選定
OD缶一体型バーナーを選ぶにあたって、価格以外で違いが出るポイントを挙げていきます。
ざっとこんなところでしょうか。
これを踏まえた上で、各社のバーナーが自分の用途に見合うかを見ていきましょう。
キャンプ〜温暖期の登山も見据えている人
キャンプでの使用がメインで比較的温暖な時期しか使用しないとなれば、それほど高出力である必要はなく、普通に選べばSOTOのアミカスあたりがちょうどいい感じのスペックです。
このモデルにはSOTOのお家芸であるマイクロレギュレーターは付いていません。
しかし、低温下での積極的な使用を考えていなければ、特に気にしなくても良い部分です。
着火装置付で4本五徳。耐風性が考慮されたすり鉢形状のバーナーヘッド、必要十分な収納性とトータルバランスに優れ、価格も安価な部類に入ります。
しかしSOTOは、ヒートエクスチェンジャー付のクッカーでの使用をメーカーとして禁止しているという事で、要件として該当クッカーでの使用を挙げている僕は、検討対象から除外せざるを得ませんでした。
炎が横に広がらず真っ直ぐに上がる直噴型なので、ヒートエクスチェンジャー付のクッカーと相性が良いはずで使えない事は無いと思うのですが、こんなにも大きく絶対にご使用にならないようにと書かれているとちょっと萎縮してしまいます。
「バーナーと同じメーカーのガス缶以外絶対に使用しないでください」という文言同様、万が一の際のメーカーの自己防衛と消費者保護の為、“建前上必ず表記しなくてはならないもの”であり、自己責任での使用は可であると、僕個人は認識しています。
しかし、SOTOがこの手のクッカーを認めない姿勢を、この警告文から強く感じますので、購入の際のひとつの目安としてください。
冬季のキャンプも行う場合や登山メインの人
冬季のキャンプや冬山でも使うつもりなら、ウインドマスターかP-153がおすすめです。
どちらも耐風性を上げ、寒冷地での使用に耐えうる工夫がなされていますが、両者でそのアプローチの仕方が異なります。
SOTOのウインドマスターはスマート
ウインドマスターはアミカス同様、すり鉢形状のバーナーヘッドで風に強いことはもちろん、レギュレーター機構を搭載することで寒冷地でも安定して使用できます。
また、五徳は標準で3本ですが、オプションとして着脱が容易な4本五徳も存在し、軽さを選ぶか安定性を選ぶかをユーザーの好みで選択する余地があります。
プリムスのP-153はマッチョ
対してプリムスのP-153は3,600kcalの高出力を武器に寒さや風と戦います。
大型の4本五徳を風防・隔壁としても機能させて拡散する炎を4ブロックに分け、風向きによってどこか1ブロックの火が消えてしまっても、残りの3ブロックで何とかする、というマッチョな設計思想で耐風性を向上させています。
僕の場合、ウインドマスターは先ほどのヒートエクスチェンジャー絡みの理由で、また、極端に気温が低い場所での使用も視野に入れなくても良いので、プリムスのP-153も検討対象から外れました。
キャンプメインの人
各メーカーから様々な種類のバーナーが発売されていますが、正直温暖期のキャンプでの使用のみであれば見た目と価格だけで選んでも、何ら問題は無いと思います。
というわけで、ここからは僕の独断と偏見がたっぷりと詰まったバーナー選びのプロセスをご紹介していきます。
おそらく多くのキャンパーさんに当てはまる部分があると思いますので、続きをどうぞ。
僕のOD缶一体型バーナー選び
①圧電着火装置の有無
この形態のものに限らず全てのガスバーナーは、ガス缶と接続し、バルブをひねってガスを出してから着火装置で火をつけます。
この着火装置が本体に付いているモデルと無いモデルがあり、無いモデルの場合は、別途ライターその他の点火装置を用意して着火することになります。
僕は個人の美的感覚から「着火装置が付いていないもの」を選択しました。
とはいえ、これがないと火がつけられないという必ず必要なものなので、だったら最初から付いていた方がいいのでは?と思いますよね?
ここが納得いかない方は、最初のアミカスを購入するのがベストだと思います。
それでも僕がこれを不要と思う理由は、以下の4点です。
無くても困らないし、後々無駄になるかも知れないリスクを抱えるパーツは、初めから付いてなくても良い、という考えです。
着火装置の有無でのサイズや重量の差は気にするほどではありませんが、僕個人的には付いていると野暮ったく見えて、無い方がデザイン的にもスッキリしていると感じます。
例えば、プリムスの「P-115フェムトストーブ」は、火力調整つまみの直ぐ後ろに着火装置があり、つまみを押し込めば着火できるという、画期的なアイデアが売りの一つであるバーナーです。
後ろの着火スイッチを確実に押す為に、そのコンパクトなボディには見合わないほど大きい黒いつまみが付いています。
ほとんど言いがかりに近い個人の主観で申し訳ないのですが、この樹脂製の黒いつまみが、僕にはどうしても野暮ったく見えます。
せっかくここまでコンパクトに設計したのに、黒くてデカいつまみがバランスを崩している様に僕には見えてしまいます。
愛用者の方々、申し訳ございません。異論は認めます。
そんな事よりもむしろ、着火装置を付けてもこの重量に抑えた事や、つまみがデカいとグローブをしていても操作し易い事など、美観より重視すべき使用上のメリットを評価すべきですよね。
しかし一方で、ごく少数ではあるものの、「着火装置が機能しない」とか「直ぐ壊れた」というレビューも見受けられます。
もちろん多くの個体は正常に動作しているのでしょうが、こうしたレビューを見るにつけ、僕の中にある”着火装置無くてもいいじゃない感“が加速します。
それでもレビュー全体を見れば概ね好評なわけで、どんな商品であってもマイナス評価がある程度つくのは当たり前ですから、良くも悪くも評価されるだけ売れているという証拠でもあると思います。
あくまで着火装置不要論者の一意見ですが、僕にとって着火装置は、例えるなら車の窓の上につけるドアバイザー的な感覚です。
美観と利便性を天秤に掛けた結果、必要性に欠けると判断しました。もちろん僕の車にドアバイザーは付いていません。
CB缶一体型のSOTOのST-310は「着火装置が付いているけど押しづらい」という事で専用のアシストレバーがオプションで販売されていたりします。
正直そんな専用品を買うくらいなら、同程度の金額で買えるハンディタイプの点火装置を1個装備して色んなバーナーに使いまわした方が良いと、個人的には思います。
ただ、このタイプだと単純に本体から独立しているだけで、低温・高所に弱い事に変わりはありませんので、着火にはフリント式ライターなど、擦って物理的に火花を飛ばせるものが最適です。
これらはあくまで僕の個人的な感想であって、「付いていた方が便利」というのが普通で、現在国内で正規販売されている物のほとんどに着火装置が付いています。
ですが、これを不要とする事で選択肢はかなり絞れますので、選びやすくなります。
この条件下では、国内で正規販売されている着火装置が無いバーナー4種と、そこそこメジャーな外国産でPSLPGマーク無しの2種も加えた↓の6種が候補となります。
これらのスペック比をまとめたのが下表で、黄色で示した右端2つがPSLPGマーク無しの外国産バーナーとなります。
②五徳の数
クッカーを支える五徳が3本の物と、4本の物があります。
もちろん多い方が安定しますので、4本の方が使い勝手はいいでしょう。
調理中の汁物をひっくり返した経験があるという人は、五徳は4本以外考えられない、とおっしゃっておりましたが、そうした経験の無い僕からすれば、3本の場合だと緊張感があって調理中転倒しない様に気を配る癖が付いていいんじゃないかな、なんて思ったりします。
料理は火を使いますから安全を確保するためにも、常にハラハラしながら使ってるくらいがちょうどいいかな、と。
先ほどの条件「着火装置無し」で4本五徳の物はスノーピークのギガパワーストーブ地のみになります。(※ちなみに同一形状で着火装置の付いたオートモデルもあります。)
重量よりも安定感を求めた結果の「4本五徳」と、極限までの軽量化の為の「着火装置無し」は相入れないコンセプトですからね。
ギガパワーストーブ地は1998年発売のロングセラー商品で、2000年代初頭に絶滅したと見られた花が咲くような感じで開く五徳デザインが逆に新鮮で魅力的です。
その構造が災いして、バーナー部が剥き出しになっていますので耐風性は絶望的ですが、メーカー側もそれを意識してか、専用の風防が販売されています。
価格・出力・収納性は及第点で、4本五徳、着火装置付モデルやオプション風防もありと、トータルバランスの優れたバーナーです。
安くて個性的なモデルですし、スノーピークブランド商品にしては持っている人が少ない印象ですので、人と被らない物が欲しくてデザインが気に入れば、これはありですね。
僕はその特徴的な五徳形状があまり好みではなくパスしてしまいましたので、必然的に3本五徳しか選択の余地が無くなりました。
五徳は増やせませんが、不安定な地盤の上で少しでも安定性を確保する為には、OD缶の脚としてスタビライザーの使用が効果的です。
手持ちのクッカーの大きさとの兼ね合いも考慮して、五徳の本数や大きさを選びましょう。
③炎の形状
バーナーの炎が一本の火柱になる「直噴型」と、周囲に広がる「拡散型」の2種類があります。
直噴型は熱が一点に集中してしまうので焦げ付きやすく、一般的に調理には拡散型の方が向いていると言われます。
家庭のキッチンにあるガスコンロが拡散型ですので実際それは正しいと思いますが、良く調理をする身からすれば、「火加減調整で何とでもなる」と思える部分ではあります。
また、拡散型はクッカーの大きさによっては外に火がはみ出してしまうという点で、熱効率の悪さを指摘される事があります。
どちらを選んでも一長一短あるわけですが、どちらともそういう物だと割り切って使っていれば、特に不便を感じることはないでしょう。
これも五徳同様、使う予定のクッカーとの相性で選ぶようにしましょう。
例えばヒートエクスチェンジャー付のクッカーを使用する際は、炎が中心にまとまる直噴型の方が便利に使えますので、実用性と照らし合わせるならそのあたりがポイントになります。
ヒートエクスチェンジャー付のクッカーは、底面にある周囲を熱交換機で囲われた穴の部分に炎を集中させる事で、効率よく加熱できる仕組みになっています。
拡散型よりも、炎が一点に収束する直噴型の方がこのクッカーに適している事がお分かり頂けると思います。
候補に挙げた中で拡散型なのはスノーピークのバーナー2種で、これらはヒートエクスチェンジャー付のクッカーとは相性が良くないということになりますね。
そういったクッカーを使う予定が無ければそれほど重要視するべき項目でもなく、選んだ物がたまたま〇〇型の方だった、くらいの感じで支障は無いと思います。
④耐風性と出力
屋外で使用する火器は総じて風が大敵ですが、例えば今回の候補外として序盤に登場したSOTO製品は、バーナー部がすり鉢の様にくぼんだ形状をしていて、耐風性を向上させる工夫がなされています。
また、こちらも前述したとおりですが、プリムスのP-153の様に五徳を風防・隔壁としても機能させて拡散する炎を数ブロックに分け、風向きによってどこか1ブロックの火が消えてしまっても、残りのブロックで何とかする、という設計で耐風性を向上させている物もあります。
候補に挙げた中でスノーピークのギガストーブ地とオプティマスのクラックスの2種は、各メーカーで風防を別途用意しています。
スノーピークは専用品ですが、オプティマスの方はOD缶にクリップオンできるタイプで、この風防の内径に収まる範囲の五徳のバーナーとクッカーであれば使用可能です。
その他の4種は、五徳が風防・隔壁としての役割を果たしているか、バーナーヘッド自体に、ある程度風よけ機能を持たせた形状になっています。
しかしいくら風に強いと言っても、屋外で使用するバーナーに別途風防は必須と思いますので、あまり悩まず風防も一緒に揃えましょう。
出力に関しては、所有しているCB缶一体型バーナー、SOTOのST-310の出力が2,500kcal/hで使用上全く問題がない事から、キャンプでの利用ではこの程度あれば十分です。
また、それ以下の数値であっても、バーナーをMAX出力で長時間使い続けるというケースは稀だと思いますので、湯沸かしの時間短縮にそれほど拘らなければ、実用上問題は無いと思われます。
これらを踏まえると、候補に挙げた中では3,000kcalの高出力を誇り、別売ではありますがカッコ良くて機能的な風防も用意されているオプティマスのクラックスに魅力を感じます。
同社製のOD缶クリップオンタイプの風防は機能美にあふれています。もちろん同梱品では無く別途購入が必要ですが、それを差し引いても秀逸な機能とデザインです。
⑤収納時の大きさ、重量
まず重量に関しては、ほとんどのバーナーが100gにも満たない中で、体感できるほどの差が無いので比べるまでもありません。
収納時のサイズに関しては、五徳や火力調整ツマミをコンパクトに折り畳めても、バーナーの高さのせいで各社横並びといった印象です。
そんな中で一際目立つのがBRS-3000Tです。他のバーナーも手のひらに乗るサイズではありますが、こちらは手で包み込めるサイズ感なので、片方の手に隠して「どーっちだ?」ってやる遊びが成立するほど小さいです。
それでいて十分な火力も備えており、しかも2,000円程度で購入できるという、もはやチート性能で同じジャンルの商品として比べるのがおかしいと思うレベル。
湯沸かし短期決戦を仕掛けるヒートエクスチェンジャー付のクッカーと相性抜群で、カップ麺やレトルト調理に特化すればこの組み合わせは最強か?と思われます。
安いのでこれはこれで購入しちゃいました。
BRSっていう中国の会社って信頼していいの?という事に関しては、別記事で詳しく書いていますので参考にどうぞ。
使い倒して検証してみようと思います。
逆に最も収納スペースが大きくなるのが、唯一五徳が畳めないモデルの、プリムスのエッセンシャルトレイルストーブです。
しかし、収納サイズがやや大きいというデメリットこそありますが、その分ガッシリとしていて3本五徳にしては安定感があります。
また、この畳めない五徳が遮熱板の役割を果たしており、輻射熱がOD缶に返らずクッカーを効率的に温める事で、より安全で低出力でも効率の良い調理を可能にしています。
最終的に僕はOPTIMUS CRUXを選んだ
さて、長々と書いて参りましたが、収納についてスペック表の数字だけでは推し量れなかった物があり、それがオプティマスのクラックスで、結局僕はこれを選びました。
それぞれに異なる特性を持ちつつも、いかにも「道具」という感じの外観であることが共通しているバーナーの中にあって、一際目立つこのカラーリング。
明らかに異質です。
このライムグリーンのバルブハンドル色を敬遠する方もいらっしゃる様ですが、僕は大好物です。
ん〜おかしいなぁ、カッコいい担当はMSRのポケットロケット2だったはずですが、こんなダークホースが居たなんて正直驚きです。
ポケットロケット2はヒーロー戦隊物でいうと主役の赤ですが、オプティマスのクラックスは黒のイメージ。
主役級の実力を秘めつつも、一匹狼の如く群れず(国内正規販売されていないという意味)、どこか影があって(PSLPGマーク未取得という意味)クールな存在。
そしてこのギミックに驚愕。
く、首折れてはりますやん。
SOTOのST-310と似たような形状で、同じくらいのサイズ感の大きなバーナーヘッドで高火力を実現しているのですが、この首折れのおかげでその大きさからは意外なほどコンパクトに収納できます。
折り畳むではなく、折り曲げるという発想が実現したこの収納性、実に見事です。
かつてプリムスで販売していたP-173も同じく首が折れるタイプでしたが、あちらは五徳の径が151mm、重量173g、そして3,800kcalの高出力というバブル期に作ったんですか?と言われかねない豪華仕様で、ほとんどの人にとってはオーバースペックでした。
ミニマルな美しさを訴求ポイントにするには、このCRUXくらいのサイズ感で正解だと思います。
ライムグリーンのバルブハンドルの一見するといびつな形状は、収納した時に本体に干渉しないようにあえてこのデザインを採用している様です。
実際使用しての感想ですが、特に回しづらいといった印象は無かったです。
そして、パラボラアンテナの様な形状にトランスフォームした後は、
付属のマスクの様な専用ケースに包んで収納できます。
そしてこれが最終的に、
250サイズのOD缶底部のくぼみに収まるのです。
というわけで僕は、最終的にはいつもどおり変わった色や形状、そして小粋なギミックにノックアウトされてこれをポチりました。
比較表で収納サイズを比べると、スノーピークのギガパワーマイクロマックスライトとさほど変わらない印象を受けるのですが、単純なスペック比では見えてこない物もあるんですね。
実際収納してみると、ややはみ出はするもののOD缶底にフィットしてデッドスペースを効率よく埋めてくれます。
クッカー内に収めてもガタつかず、クッカー内壁を傷つけることもありません。
この無駄が無い美しさには本当に良くできているな、と感心させられました。
僕はこれを機にクッカーと風防も勢いで全て揃え、晴れてオプティマス信者となりました。
CRUXの悪い点
一応BAD POINTも書いておきます。
- 折り畳み状態から展開し、真っすぐにしてロックされても多少グラグラする。
- 折り畳み機能がある事により、それが無い他の商品にくらべて故障のリスクが上がる。
- 日本未発売なので並行輸入品を買う事になり、通常販売価格より2,000円くらい高い。
まず、グラグラ問題については購入前から分かっていましたし、実際使ってみても僕にとってはそれほど気になる部分ではありませんでした。
折り畳み部分の故障リスクに関しては、故障しない事を祈るのみですね。ただ、持ってみると造りがしっかりしている事が良く分かりますから、ここもあまり不安ではありません。
最後に金額は、北米Amazonの販売価格が$46.79でしたので、日本円に換算すると5,200円くらいとなり、2,000円以上高くなっているという事になります。
「SOTOのST-310の販売価格が高騰しているから」、とOD缶一体バーナーを勧め、「圧電着火装置は故障のリスクがあるから」という理由で選択しなかった僕が、最終的に価格も故障のリスクも高い商品を買ってしまっているという事が、最後の最後で判明してしまいました。
矛盾によって自ら記事の説得力をおとしめている僕を反面教師にして、道具選びを楽しんでください。
おまけとあとがき
最後に、今回候補に挙げながらフォーカスしなかった2種についての個人的な感想です。
まず、スノーピークのギガパワーマイクロマックスウルトラライトですが、世界最軽量56g(BRS-3000Tは国内正規販売されていない為ノーカウント)で、その他もそつのないスペックの人気モデルです。
先端を折り畳める五徳は畳んだ状態でΦ90mm、広げればΦ125mmにもなり、計量コンパクトモデルでありながら思った以上に大きく安定していますし、風防の役割も果たしてくれます。
正直クラックスよりもこっちを買おうかとだいぶ迷いました。
しかし、人気があるせいかメーカー欠品中で、在庫ありの店舗では価格が高騰しており、執筆時点で約1万円と、クラックスとBRS-3000Tの2個買ってもお釣りがくるほどになっていましたので、断念しました。
信頼性を考慮すると、BRS-3000Tは小さすぎることが仇となり、あくまで「予備」というポジションを脱する事ができないと思いますので、メインバーナーとして軽量コンパクトであることを重要視する方にとっては、良い選択肢になると思います。
欲しい方は、価格が落ち着くまで待ちましょう。
もう一つ、MSRのポケットロケット2です。
OD缶も含めたトータルバランスのカッコ良さは抜群ですが、あらゆるカタログスペックが同一カテゴリ商品と比べて数値上劣っています。
とはいえ実用上は、他商品と大きくかけ離れた性能比は体感できないと思われますし、何より厳しい日本の審査をパスして晴れて国内正規販売可能になった背景には、他ならぬMSRファンの強い要望があったからに違いありません。
僕が余計な心配をしなくても、今後も数多くの根強いファン達に支えられ、一定数の販売を継続して行けるモデルであるでしょう。
本当に最後の最後に。
僕のチョイスは奇しくも国内正規販売されていない2種になりましたが、PSLPGマーク取得制度を否定する意図は全くありませんし、もちろん安全性が高いに越したことはありません。
以前記事にしたとおり、僕自身、ガス燃焼機器の使用において、安全上注意を払わなければならない点はよく理解しているつもりです。
僕がチョイスした2種は、専用ガスカートリッジも国内では入手できませんので、同じ選択をされる方はあくまで自己責任でお願い致します。
とはいえ、ご紹介した以上は僕にも一定の責任があると思いますので、次回はオプティマスのクラックス並びにBRS-3000Tが世界でどの様に評価されているかを記事にしたいと思っています。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
それではまた、次の記事でお会いしましょう!
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